臨みは哀しくて綺麗な世界を描く事。05年度H/Sをどうぞお楽しみ下さい。


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『 猩紅館 』
 逃亡者



 「はぁ・・・はぁ・・・・・」

 どのくらい走ったのだろう。どのくらい?関係ないわ。
なんて暗い闇、是が夜なの?なんて黒い闇。
道はあるの?真っ暗よ、真っ黒。解るはずがない。
でも走ってる、私は走ってる。

 「はぁ・・・はぁ・・・・・はぁ・・・」

 アイツが追ってくる。アイツが私を追ってくる。
怖い、怖い、逃げなきゃ。怖い、怖いわ。
もっと速く、速く走らなきゃ。
そもそもアイツは何者なの!?いつもアイツに狙われている。
そして今、アイツは私を追って走ってくる。
もっと速く、速く逃げなきゃ。

 アイツがやってくる。アイツが私を殺しに来る。
殺される、殺される。怖い、逃げなきゃ。
もっと速く、速く走って逃げなきゃ。
アイツの足音が響く。

   カッカッカ・・・カッカ・・・・・

 なんて恐ろしい音、アイツが殺しに来る。
駆けて此の足、もっと速く、アイツに捕まらないように。
アイツが追いつけないように、アイツとの距離が広がるように。
駆けて此の足、速く、速く。
殺される、怖い、怖いの。

   カッカ・・・カカ・・カッカッカ・・・

 まるで死への時限爆弾の音。
アイツが来る、アイツが私を殺そうと追って来る。
誰か、誰か助けて。
アイツに殺される、殺される。
無我夢中で走る私、まだよ、まだ。
走らなきゃ、アイツから逃げるのよ。
もっと速く、速く走って逃げなきゃ。

 アイツが私を殺しに追ってくる。

   カッカッカ・・・・カカカッカッカ・・・

 もっと速く、速く走って逃げるのよ。


 ・・・・・電灯?黒世界にひとつの明かり。
 !?
人だわ!人がいる!あの光の元に女の人がいるわ!
助けて!!!

 「あら、お嬢さん。そんなに息を切らせて、どうされたの?」

 「た、助けてください!アイツが来るんです!」

 「アイツ?一体どうしたの?」

 「解らない、解らないんです、でもアイツが」

 「アイツが、どうしたの?」

 「アイツが私を殺しに来るんです!!お願い、助けてください!」

 「まぁ、なんてこと。でもアイツって一体どなた?」

 「解りません、解らない、ただ怖いんです!殺されてしまう!!」

 「・・・・・そうね、助けてさしあげましょう。よくお聞きなさい。」

 「は・・・はい!」

 「貴女に此の剣を差し上げます。さぁ、受け取って。」

 最初から持っていたのだろうか。
其の女性は丁寧に明かりを受けて光る、見るからに上等そうな剣を私に手渡した。

 「さぁ、しっかり握り締めて。」

 「え、た・・・逃がしてくれるんじゃないんですか!?」

 「助けてあげますわよ、貴女の恐れる“アイツ”から。」

 「で、でも!!今にもアイツが追いついてくるわ!足音が・・・!!」

 「足音?聞こえないわよ?」

 「え・・・」





 「あ・・・本当。足音がしない!・・・た・・・助かったのかしら・・・」

 安心して立ちすくめば良いところだろう。
でも私は何故か、アイツが私を殺す事を諦めて立ち去った事に違和感を感じたのだ。
考えるとただ私は奮えて、剣をくれた女性に肩を支えられていた。
ブロンドの長い髪、セピアの瞳、暗がりでも解る天使のように白い肌。
私はようやく、私を助けてくれた女性の風貌を認識した。
そして、うっすらと微笑み、私の肩をさすってくれる美しい女性は云った。

 「“アイツ”って、貴女の後ろにいらっしゃるお方でしょう?」

 「!?」

 違和感は的中した。
足音が止まった、つまり私に追いついたという事だったのだ。
アイツは何もしてこない、でも私はアイツに殺される気がしてならないのだ。
奮えが増して、止まらない。
天使のような女性は優しく云った。

 「大丈夫よ、そんなに怖がらないで。助けてあげるわ。」

 「怖い、怖い・・・・・殺される・・・!!」

 このまま走り去ればいい。
しかし私は恐怖のあまりに足が硬直して、其の場から動くことができなかった。
そして、何故か彼女の語りかける言葉から離れられなくなっていたのだ。

 「ほら、剣をしっかり握って・・・そう、そして振り返って“アイツ”を見るのよ。」

 私は恐怖のあまりに声を出せなかった。とめどない恐怖の涙を流し、全身を奮わせながら彼女の支持に首を使って訴える事しか出来なかった。

 「ほらほら、そんなに怖がらないで、大丈夫。振り向いて、そして口をつむんで、目をしっかり開いてね。両手でしっかり剣を握って“アイツ”を見るのよ。でも決して、其の剣で“アイツ”を殺そうなんて考えてはダメ。」

 (じゃあ、どうすればいいの・・・?)

 声にならない声。今、正にアイツは私の背後に居るのだ。

 「其の剣は傷つけるための物じゃないのよ。闘うためのものなの。恐れてもグッと堪えて、“アイツ”を見るの。決して剣を振り上げてはいけません。いいわね?」

 訳がわからなかったが、まるで催眠にかかったかのように私はゆっくりと頷いた。
顔を上げると、美しい女性は其処には居なかった。
 フと我に返った。
更に内から恐怖がこみ上げてきた。
足がすくんで走れない、逃げられない。
どうして彼女の云う言葉を忠実に聞いていたのだろう。
でも殺されるのを待つか、彼女の支持を試してみるかしか、私に選択肢は無いのだ。
今もアイツは私の背後に居る、おぞましい気配だけがおびただしく漂う。逃げようか・・・・・?
奮える足で一歩、踏み出した。

   カッ・・・・・・

  !?

 私は思わず振り返ってしまった。
目の高さを私に合わせて、不気味な黒い影。
ギラギラ光る眼孔がじっと私を見つめている。
“アイツ”が私の方へ右手を差し伸べてきた。

 「いやっ!!」

 思わず手に握った剣を大きく振り上げた。


 「きゃぁぁぁぁぁ・・・ぁぁ・・ぁ・・・・・・・・・」



 私の断末魔が黒世界に響き渡る。



                          



 「本当に、残念だわね。」

 女はフゥと溜め息をついた。

 「でも仕方が無いのかもしれないわね、彼女は負けてしまったのよ。」

 ソファーに腰掛け、淹れたてのアールグレイに少量のミルクを注いだ。
左の太腿にもたれ掛かる白いソリッドのペルシャを、しなやかな白い指で撫でながらこう続けた。

 「私はチャンスを与えたわ、自分自身に気付くように。彼女が自分自身と向き合うチャンスを。でも彼女は負けてしまった、彼女自身に。
ああ、なんて皮肉、なんて哀しいことかしら。ねぇ、マチルダ。」

 気品ある白いペルシャは、主人に撫でられ喉を鳴らしている。
女は愛猫に微笑みかけ、アールグレイを一口飲んだ。
そしてフと哀しげな表情を浮かべ、天井を仰ぎ溜め息をついた。

 「自分自身に逃げ彷徨うとは、なんて恐ろしい事なんでしょう。」

 そう云ってから陶器のカップを軽く揺らし、英国の贔屓の店から直輸入している香り高いアールグレイの香りを堪能して、また一口唇から注いだ。

 「ニャー」

 白いペルシャが上品にお座りをし、主人に甘えた鳴き声で訴える。

 「あら、マチルダ、お腹が空いたのね。」


   ギィ・・・・


 「・・・ふふ。お客様だわ。今日はお客様が多くて嬉しいわね、マチルダ。ご飯はちょっと待ってね、すぐ戻るわ。」



 猩紅館に客がまたひとり。











猩紅館へようこそ。





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【2005/09/28 23:02】 【ハナ物語】 | トラックバック(0) | コメント(2) | Page top↑
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コメント
なんか、スゴイ世界には入っちゃう記事Σ(*´Дノ|
マチルダ。。。聞いたことある。。夫人(?)

読みながら、「アイツ」ってもしや、自分では!と思って、サイゴまで読んで、「あたった(・∀・)」と喜んでみたww

自分自身と向き合うのって怖いよね。。
結構逃げてきたな。。SeN_| ̄|・...○
て、昔(?)を思い出してみたりw

-------------------------------------
今までリニュしてた(・∀・)
リニュ以外何も、できなかったけど、今日はもうねまぁーす☆
オヤスミ(・∀・)ノ^*・'゜☆。.:*:・'☆'・:*:.。.:*:・'゜:*:・'゜☆w
【2005/09/29 01:29】 URL | SeN #-[ 編集]
!?
ってことは、華がEasy見てメール送った時に丁度リニュ完了してたってことかな!?
すごいすごい~!
華がメールしてる間に書き込みっぽいしw
ハートのリンク?(*ノェノ)キャ♪

感想嬉しい、有難うございます^^
ラストの婦人の台詞が使いたくて描いた物語なの。
いろいろ想像しながら読んでくれて嬉しいなvそうしてくれると喜んで鼻歌鼻ずさみながら華、力んで頑張っちゃうのです!!
マチルダはパっと出た名前です。
ププw

またおいでや~♪
【2005/09/29 19:49】 URL | #vIfvFHzI[ 編集]
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