臨みは哀しくて綺麗な世界を描く事。05年度H/Sをどうぞお楽しみ下さい。


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『Ending/VINTAGE』

 貴方の罪は重すぎた。



 焦がれ焦がれるわ、今ですら。
私へ解放の日は永遠に訪れないということ。
そして貴方も望まなかった。
このような結末は。
私たち一族への刑罰は百年の拘束、そして貴方は一番の罪人。
私は八年の猶予が与えられたけれど、貴方の罪は重すぎた。

 VIN(ヴィン)、VIN・・・
貴方の名を呼ぶ私の鼓動は脈を打っている、今ですら。
私たち一族へ刑が下される直前のくちづけ。
そしてVIN、貴方が云った言葉、
「俺たちが釈放された時には、皆に秘密を打ち明けよう」
 九十二年間の詳細は忘れてしまったけれど、其の言葉だけが私の救いだったのよ。
皆に打ち明けるーつまり貴方と私の秘密の愛も、釈放と同時に解放されるということなのだから。
貴方の罪は重すぎて、私に解放の日は来ない。

 このような結末ならば最初から、苦しい拘束の日々を貴方と過ごしたかった。
例えあの暗く狭い監獄の中に閉じ込められようと、貴方を失う事実より随分と良い。
そう、最初からそう願っていたわ。でも当時の私も囚人。

 二年早くVINが帰ると聞いた時、どれだけ嬉しかった事か。
胸の高鳴りは収まらず、ただただ貴方だけが私を取り巻いていた。
恐ろしい考えも浮かんで掻き消そうと努力したけれど、まさか其の通りであったなんて。

 VIN、VIN、小さな箱に詰められた貴方。
愛しい貴方。
其の出来事は二年前に起こっていたなんて。
私が外の世界に居る間に、貴方は死んでしまったのね。
VIN、貴方の白い砂に触れたわ。ねぇVIN。
VIN、どうして死んでしまったの?

 愛しい貴方は罪人。

 貴方の罪は重すぎた。

 そして私へ解放の日は、永遠に訪れないの。



 貴方の最期は正義であったと、聞いたわ。












vintage.jpg
     永く永いVINTAGE

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【2005/09/01 20:45】 『VINTAGE』全7章 | トラックバック(0) | コメント(0) | Page top↑
『VINTAGE 1』

 私は八年早く出る事が出来た。
家族と友と、再会を手に手を取って喜び、其れは忘れかけていた温もりだった。
私を含め大半の人は、定められた期間より少しなり早く出る事が出来ていた。
想い続けた歳月をもきっと、此の瞬間に忘れてしまうのだろう。
家と自由、戻ってきたんだ。
あの暗く狭い場所から、孤独から。
嗚々、外の世界は明るく、なんて広いんだろう。
空気は透明でこんなにも呼吸が容易い。
瞳が取り込んだ広大な世界は、パステルカラーのメルヘンの国のように心に映るほど。
家と自由、私は本当に戻ってきたんだ。
そして此の瞬間、身体の解放の喜びのあまりに、長く長い歳月の苦しみは解き放たれ、記憶から無いものとなった。
全てが元通りの世界。
 其れから二年の月日の間に、一族のほぼ全員が帰ってきた。
其の都度、再会の喜びに溢れた。
一族の、ただひとりを残して。
皆は忘れてしまったのだろうか、あの偉大なる罪人を。
私の身は八年早く解放されど、心は未だ解放されていない。
想わぬ時など無い。
度々呼吸はこんなにも軽い空気を上手に取り込めず、重く重くなり、胸は強大な力で押さえつけられているかのように苦しく苦しくなるのだ。
長い監禁の歳月の苦しみから解放されど尚、私の苦しみは終わってはいなかった。

 愛する人の罪は重過ぎたから。


vintage1.jpg

【2005/09/01 20:40】 『VINTAGE』全7章 | トラックバック(0) | コメント(4) | Page top↑
『VINTAGE 2』

 私たち一族に下された刑期は百年。
一族は別れ別れに引き離され、あの暗く狭い場所へ閉じ込められた。
そう、私は牢獄から解放されてきたのだ。
九十二年間、私はあの場所でどのように過ごしてきたのだろう。
どんな罰を与えられて、どんな身体の苦しみを味わったのか・・・今となると全く思い出せないのだ。
そして誰もが覚えてはいなかった。
まるで閉じ込められる前と、釈放の瞬間との間の "時の空間" が消え失せたかのよう。
そして二つの "時の距離" が密接にくっついた。
思い出せないとはそういう事。記憶から抹消されてしまったのだ。
そう望まなくとも、心の奥深い部分がそうさせたのだろう。
恐らく想像を絶する苦しみだったに違いない、あの牢獄での日々は。
忘れてしまう程に、苦痛の日々だったのだろう。
誰にとっても耐え難い苦しみの記憶など、覚えている必要なんてないのだ。
記憶のトラウマに悩まされ、その後も苦しむ必要など無いはず。
だって、罰を受けたのだから。
そして、許され釈放されてきたのだから。
今はただ自由と家の喜びに、新しい生活を笑って過ごせば良いのだ。
長い拘束の日々の詳細は、謎。

 自由を与えられど、私を苦しめるのは抹消された記憶。
笑えない、あの人たちのように上手に、笑えない。
一族のただ貴方、貴方だけが今もあの場所に居る。
あの、暗く狭い監獄に。
記憶が失いとは、経験していないと同じ。 "中" での事はさっぱり解らない。
今もあの暗く狭い監獄に閉じ込められている貴方は、どのような苦しみを強いられているのでしょう。
想像は悪く悪く広がるばかり。
どうなの?VIN、其処での生はどのようなもの?
罰とは、どんなもの?
鞭で打たれているの?奴隷のように働かされてる?
それともただ、電話ボックスのように狭く暗いあの場所に、閉じ込められたままなのかしら。
其れは孤独の中への拘束。
嗚呼、私がもっと強固な人間であれば、今貴方の強いられている現実が解るのに。
覚えていたのでしょうに。
解ったところで祈る事しか出来ないけれど、何も知らないよりずっとマシ。
遅くとも百年の刑期が終われば、貴方は帰ってくる。
其れまで、其れまで、私は解放されど解放されない。
VIN、貴方が苦しんでいると云う現実、たった今がこんなにも、こんなにも・・・
こんなにも胸を締め付ける。
私へ貴方へ、解放の日は未だ訪れていない。

 そう、貴方の罪は重すぎたの。

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【2005/09/01 20:29】 『VINTAGE』全7章 | トラックバック(0) | コメント(0) | Page top↑
『VINTAGE 3』

 あまりにも遠い昔の事で、出逢いはよく覚えていないわ。
ただ、VINと私の愛は、誰にも秘密の愛だった。
私は一般に幼かったけれど、恋ではなく、是は愛の他ならなかった。
そしてどうして秘密だったのかも、今では思い出せない。
VINは私の遠い親戚にあたる位置。だからかしら、秘密だったのは。
あまりにも遠い昔の事で、よく覚えてないの。
ひとまわり年は上だった。
でも此処では、数年の年の差なんて意味を持たない。
そう、今、此処でなら。
あまりにも遠い昔の事で、今となると随分と違うのね。

 私達一族に刑が下される直前。
離れ離れにされる直前、VINと私の唇は重なり、長い時間濃厚なキスをしていた。
泣いたかは覚えていない。
もしかしたら、触れるだけのキスだったのかも知れない。
大きな意味を与えるキスだったから、長く濃厚に記憶には残っているのかも知れない。
ただ其の時、貴方が告げた言葉は刺青のように、胸に刻まれ残っているの。

 感覚だけなら、鮮明と思い出せる。
事実より遥かに、大切なモノよ。
VINと過ごした時間、私達の屋根裏部屋。
抱き締められれば、大きく大きく貴方を感じる。
抱き合ったなら、貴方が私に頼りきってる子供のようにすら感じるの。
肩にかかる黒く伸びた髪は、光に当たれば青くすら見える事。
黒髪が私の頬に触れた時、少し硬いの。
冷たい色をした瞳は、私を愛する時だけ、とてもとても温かい事。
背が高く、長い手足に細い線、絵に描いたような貴方の手。
小さな私の掌と並べて、親子のようだと笑った。

 「俺たちが釈放された時には、皆に秘密を打ち明けよう」

 私を貴方が救い、私に感覚を残してくれた。
是以上の悲しみも苦しみも、要らないのだと。
そして貴方は罪人。

 貴方の罪は重過ぎた。

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【2005/09/01 20:28】 『VINTAGE』全7章 | トラックバック(0) | コメント(0) | Page top↑
『VINTAGE 4』

 朗報だった。
刑期より2年早く彼が、VINが釈放されると云うのだ。
私たち一族の中で、彼が最後の囚人。
其の夢の日、一族は皆祝いの準備と礼装をした。
私はオフホワイトのシルクのドレス。
肩紐はシンプルで光沢のあるトップに、絞った腰周りから切り替えがあって、膝少し上のスカート部分はふんわりと広がっている。
高鳴り止まない胸。遠い初恋の感覚を思い起こすのよ、ときめいているの。

 自由よりずっと、ずっと焦がれたVIN、貴方。
今か今かと、貴方がやってくるであろうリビングへ続く廊下の向こう、光の廊下。
見つめながらも、じっとしていられなく、そわそわと両手を胸の位置で握り締めたまま動き回っている、私。
永い此の生の中で、経験した事あったかしら、こんな幸せな気持。
胸が鳴るの、止まらないのよ、待ち遠しい。
想えば想うほどに幸福。夢が広く広く浮かび行くわ。
全ての世界を統合したとして数えてみても、誰が理解できるかしら!?
こんなに幸せなのよ。
足はしっかりフローリングに着いているのに、胸から上は宙に浮いている。
正確には、そうね。鳩尾辺りからよ、浮き上がってくるの。
まるで胴体が切り離されているかのよう。
スプラッターね。快感を飛び越えた胸騒ぎ。
視線は光の廊下に釘付け、胸が騒いでいてもたってもいられない。
胸の中身が溢れ出しそうで、飛び出せずに内で暴走している。
何よりも恐ろしい予言すら浮かばれてくる。
大きすぎる喜び、胸騒ぎのせいよ。

 感情の暴走、VIN、VIN、今まで以上に貴方しか見えない。
大きすぎる喜びから産まれた不安。
そして喜びへ寄生した起こってはならない不安。
嗚々、どうにかなってしまいそう。
今にも私、心に呑み込まれるわ。
其れ程に、貴方は力を持ち得てるという事、ねぇVIN。
貴方は私を壊すにも、治すにも容易。
VIN、VIN・・・貴方の罪より、罪深い事はもう、あってはならない。
どんな不幸ももう、あってはならないの、ねぇVIN。
喜びから産まれ、此の胸に寄生した不安はあってはならないのよ。

 どんなに貴方の罪が重くとも。


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【2005/09/01 20:25】 『VINTAGE』全7章 | トラックバック(0) | コメント(0) | Page top↑

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